'95夏 今年の夏は八重山へ その3 - 西表島

7月29日(土)
西表島(ヒナイサーラの滝)
いるもて荘YH

昨日の日差しで既にあちらこちらがひりひりで、一向にほてりが収まらない。すっかりやけどの状態やねぇと思いつつも、今日は西表島メインイベント、ヒナイサーラの滝である。毎週土曜日正午(地域により時間が違う)から、フジテレビ系列で「風まかせ漫遊記」という番組をやっているのだが、その中でちょうど良いタイミングで西表島にK2(お笑いタレント)が行く番組が流れた。その中でヒナイサーラの滝へも登っていっていたので、絶対ここへ行きたくなり、西表島の日数を急きょ1日のばしたほどであった。とにかく、普通の観光地では考えられないところなのである。

朝食も取ったし、弁当も持ったしいざ出発!と思いきや、その日は海の干潮の時間が14時頃だったので、11時頃出発するのが良いよ。と言う話で、11時の出発時間までごろごろ過ごすこととなった。旅先でごろごろしているだけというのは、何て贅沢な旅なのだろうか。これこそがバカンスというものだなと実感する。

さて、11時になってYHの車で送ってもらう。近道と遠回りの2種類あるのだけれど、どちらのコースを行きます?と聞かれて、多少の大変さがあっても近い方がいいので、近道コースにすると言ったところ、湾のど真ん中で車を停められた。ここから見えるあの目印まで水の中を歩いていってください。深くても1mくらいだから大丈夫。と言われても、距離は1Kmくらいありそうだし、1mでは結構深いよ。と言うわけで、通常のスタートポイントに降ろしてもらった。

が、いきなりスタートから目の前は川というか池。数10m先まで水の中を歩くか遠回りするかは、当然水の中を歩くことにする。かなり深いところもあり、股まで浸かりながら何とか無事に渡りきった。スタートから既に靴はびちょびちょで、なるほどYHで靴を貸してくれるわけである。この先はいかにも南国というマングローブが生い茂るところに沿って歩いていく。ちょうど潮が引き始めているので、足首程度の水の中をじゃばじゃば歩いていって、天気も良いし気持ちいい。木に飛び乗ってしまう、何ともひょうきんなミナミトビハゼ、タニシが巨大化したような日本最大のキバウミニナ。想像を絶する変な生き物たちに感動しきり。

ヒナイサーラの滝への入り口

しかし、歩き始めて早30分。行けども行けどもマングローブばかり。目印を通り越してしまったのではないかと思っていたところ、行く手を大きな川に遮られた。ヒナイサーラの滝から海に流れ込むヒナイ川である。流れは緩やかであるが、浅瀬を探すのに一苦労。うかつに踏み込むとズボッと深みにはまってしまうので、慎重に道を探す。何とか股まで浸かる程度ですむ道を開拓し、渡りきるとやっと目印の白いうきを発見した。この入口にくるまでで大冒険のようだが、ここからが本番なのである。

マングローブの林の中に少しだけ水が流れる川ができており、その道を滝に向かって進んでいく。ここからは随分水も減り、歩きやすくなった。しばし行くと、視界が開けて草原にでる。前方山の中に滝を発見。あれが目的地であるが、滝までの道のりはまだまだありそうだ。

草原の中の滝

草原を少し進むと、今度は山道に入る。連日のスコールで、泥沼があちらやこちらにできていたが、もうすっかり足はべちゃべちゃなので、お構いなしに歩いていく。泥沼がなくなると、やっと普通の山道である。と言っても、遊歩道のような整備された道は全くなく、道しるべのための木に塗ったペンキだけが唯一の人工物。国の天然記念物サキシマスオオノキが生い茂る中、板状の根っこを越えてずんずん進む。

すると、急に目印のペンキがなくなった。どこか見落としたのだろうか?が、目の前にはヒナイ川が横たわっている。もしかすると、ここを渡るのかも? どこかで一カ所、ヒナイ川を渡らなければならないところがあるのは知っていたが、ここは余りにも深そう。とりあえず、川に入ってみるしかあるまい。一歩二歩進むと足が沈むどころの騒ぎでなく、これは底なし沼の様相を見せていた。とりあえず戻るのにも一苦労するくらいだから、ここを渡るのではないだろう。

結局、渡るのは断念して他の道を探す。しばし探していると、ちょっとした崖を登ったところにペンキを発見!崖の下からではペンキが全く見えないのでわからなかった。とにもかくにもさらに先に進む。すると、今度こそ川を渡るポイントにでた。川の向こう岸にも印はあるし、何と言っても深さはひざ下くらいで、石をつたっていけば濡れずに向こう岸へ行けるというものだ。でも、既に足が濡れるくらいどうってことない状態であったが。

ヒナイサーラの滝

さらにしばし山道を歩くと、車を降りてから1時間半ほどで、ついにヒナイサーラの滝に到着。ヒナイサーラとは、土地の言葉で「ヒナイ」はひげ、「サーラ」は下がったものを意味し、白く長いひげのような滝という意味を持つ。沖縄県内で一番の落差を誇る滝で、滝の水しぶきを全身に浴びられて、涼しいことこのうえない。この真夏でも水はとにかく冷たいが、天然のプールで泳ぐことも可能である。しか〜し、滝が目的とはいえ、まだまだここは中間点にすぎない。

しばしの休憩の後、滝上を目指して山道を登る。途中急な坂があったりもするが、ちょっとだけ急になっているだけで、北海道の山登りに比べれば大したことはない。滝上へはペンキの印が細かく印されているので、迷うこともなく進めた。が、言い換えればペンキがなければ全く道らしい道がないので、大変なことになってしまうところである。ちなみに、こんな南の島なので、当然ハブがでてくる可能性もあるわけだが、へたに茂みの中に入ったりしなければ、まず大丈夫。ハブは夜行性なので、昼間はほとんど動かないのだ。昼間に見られたら運がいいとまで言われた。

ヒナイサーラの滝上

登り初めてたったの30分で滝上に到着。案外あっさり着きすぎた感もあるが、これぞ求めていた景色。今立っているところにはもちろん柵などなくて、まさに滝が流れ落ちるそのすぐのところにいるのである。滝の下をのぞき込むとかなり恐いが、人が10人くらいいるのが見えた。手を振ると振り返してくれた。

前方に目を向ければ、下方にジャングルが広がり、その中にヒナイ川、その先には青い海、海に浮かぶ鳩間島、青い空、もう言うことない最高の景色。日差しが強くて暑いので、たまに水浴びをしながらボーっと過ごす。

1時間弱ほどのんびりして、もときた道をひたすら戻る。途中強烈なスコールで10分ほど雨宿りをしたが、1時間半ほどで最初に苦労した滝入口の目印に到着。が、目の前は干潮で完全に干上がってしまっていて、道路まで何の苦労もなく戻ることができ、そのままYHまで歩いていった。こうして、たった5時間の、川口浩探険隊シリーズのような探険は終わった。全然飽きることなく変化に富んだコースは、十二分に楽しむことができ、驚きと感動の1日がこうして暮れていった。


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