ホテルは、かの有名なクフ王のピラミッドのすぐ近くにある。ピラミッドビューになると思っていたのだが、夜は部屋から何も見えなかった。なので、朝になって窓からピラミッドが見えた時にはびっくり仰天した。どうやら、夜の間は部屋に強烈なライトをわざと当て、ショーでライトアップされるピラミッドを見せないようにしているようだ。朝食を食べてから、周りを散策する。少なくとも水を買わなければいけないと思っていたのだ。ぶらぶら歩いていると、親切なおやじがまだ開いてもいない店を紹介してくれて、しかも水を買わせてくれた。これはもしやチップまがいのバクシーシの要求だろうか。
しかし、特になんかくれということもなく、ホテルでは11£E(220円)もする水がたったの2£E(40円)。売店が見つからなければホテルで買わざるをえないと思っていたが、良い店を教えてもらったものだ。だが、このおっちゃんはタクシーの運ちゃんで、タクシーに乗ってけと言われる。こちらが目的だったのか。今後もそうだが、親切にする人は、大概裏に何かがあるので注意しよう。
ちなみに、バクシーシとは施しとも言われる寄付のようなもので、空き缶を前に路上に座っている人と同じである。荷物を運んでもらったり、部屋の掃除のチップとは訳が違う。困ったことに、トイレでティッシュを渡すだけや、写真のアングルを教えるとか大したことでない上、さらに金くれと要求してくることにある。まぁ、相場としてチップは1US$(115円)、バクシーシは1£E(20円)と考えて、使い分けよう。バクシーシに1US$を渡すのはもったいないので、小銭をせっせと作ることが重要である。私は作りすぎて、皆にあげていたが・・・。
ツアーの出発は8時である。今日からスルーガイドとして、現地ガイドのホッサンさんが付く。すごく日本語がうまくて冗談も言うし、西郷隆盛、武蔵丸に似ている。本ツアーではクフ王の玄室に入らないということだし、飛行機が早めに着いたので朝も早めに出発し、目の前のギザのピラミッドを後回しにしようという考えのようだ。もう一つのJTBツアーが同じ時刻に出発していたので、ぶつからないように逆回りにしたというのもあるかもしれない。

最初に向かうのは、ダハシュールの赤のピラミッドと屈折ピラミッドである。赤い石で造られたから赤のピラミッドと呼ばれているが、真っ赤というわけではない。屈折ピラミッドは、途中で石を積み上げる角度を変えたため、変な形になってしまったピラミッドである。バスは赤のピラミッドの脇に停まる。間近に見るととにかく大きくて迫力がある。遠く砂漠の中に屈折ピラミッドが見える。
町のすぐそばにあるギザのピラミッドと比べると、まだあまり観光化されていないので、砂漠の中のピラミッドとしてはここが一番という話だ。というのも、1997年のルクソール事件前は公開されていなかったが、観光客が激減したため急遽公開に踏み切ったピラミッドとのこと。ピラミッドの歴史を語る上でも、考古学的に重要なピラミッドだそうだ。

次にバスはメンフィスへ向かう。古王国時代の都があったところで、神殿の遺跡からさまざまな立像が発見されている。特に、ラムセス2世の立像が有名である。この後、ことごとくラムセス2世の偉業に出くわすことになる。ツタンカーメンの墓の中から装飾品が多数見つかったため、個人的にもそちらの方がよく知っていたが、それまではラムセス2世が一番有名な王様だったとか。JTBの中でもたくさんのツアーが平行しているので、本ツアーのコードネームもラムセスだった。大人数のためイヤホンガイドを利用したが、これはなかなか良い仕組みである。ガイドも声を張り上げなくて良い。
ラムセス2世の像は、膝から上だけが発見されたため、寝かされた状態で展示されているので、全体像を見るには二階から見ることになる。そしてその展示のすぐそばには小さめのスフィンクスが鎮座しており、ギザのスフィンクスよりも保存状態は良いらしい。右半分を下にして倒れていたので、地下水などの影響で右半分はダメージを受けているのだが。

次はサッカーラの階段ピラミッド。エジプトで初めて造られたピラミッドだそうだ。それよりも前のものは盗掘を防ぐために石を台形の形に載せただけだったが、天に続く三角形を目指した結果、ピラミッドの形状が徐々に進化していったのだと言う。なにかにつけて、三角形は良い形として見つけることができる。ピラミッドを造った理由はピラミッドパワーだとか言われることもあるが、こうして見て来ると単に技術の進化できれいな三角形が作られただけという気がする。
ここのピラミッドは、壁に囲まれた神殿の形をしていて、列柱の間などもあり、砂漠の中に忽然と現れるピラミッドという状況ではない。入り口と反対側の小高い丘を上ると、一面見渡すかぎりの砂漠が広がっていた。なかなかすばらしい景色だ。ここで、バクシーシを要求しないめずらしいロバ引きのおやじがいたのだが、どうせ最後の最後でなにか物質を取って高額なバクシーシを要求するに違いない。写真を撮ってもらおうとして、こういう人にカメラを渡してはいけない。そこら中にお土産屋がうろうろしているのだが、なぜか彼らは「山本山」、「がんばりがんばり」と言っている。訳が分からないが、後でその理由が分かることとなる。

三か所遺跡を巡ってきて、午前中の観光は終了。近くの絨毯学校を見学する。学校と言っても、本来の小学校にさえ行けない貧しい子供たちが絨毯の作り方をマスターして、日々絨毯を作成している。子供たちは笑顔をふりまきながら作業をしているのだが、日本人には彼らの胸中を理解することはできないだろう。2階に絨毯販売場があり、シルクの絨毯は3万円を下らない。綿でも数千円はするので、よっぽど好きな人でないとなかなか手がでない。それでも、そこそこ売れていたから驚くべき日本人の金銭力。
ギザに戻って昼食である。このツアーは、全ての食事がセットされているので、みんなで同じメニューを食べる。勝手に食事して数名ずつ食中毒になることを防ぐ目的だろう。飲み物は別売りで、ビールにしろソフトドリンクにしろ、日本並の料金を取る。売店ではノンアルコールビールしか売っていないのだから、ビールを飲むならこの時しかない。メインメニューはケバブのエジプト料理で、羊の肉と牛肉だったが、これまた非常に固かった。

午後からはいよいよメインイベントのギザの三大ピラミッドである。まずはクフ王のピラミッドへ。このツアーでは、このピラミッドの玄室には入らないので、クフ王のピラミッド前で写真撮影をするだけ。あまりの大きさに圧倒される。とにかくカメラに入り切らない。砂の影響を考えて持ってくるのをやめたのだが、やっぱり広角レンズを持ってくるべきだった。
ここでハプニングが発生した。このあたりはとにかくお土産屋がたくさんいて、警察がたくさん立っているのに、違法なお土産屋がたくさんいるらしい。そして、そういう人達は警察が近づいてくると、走って逃げる。そのときにちょうどツアー客の一人にぶつかってしまい、デジカメを壊してしまった。旅行業約款によれば、企画旅行中に旅行者の携帯品が破損した場合(過失だったとしても)、実損額で15万円を限度に支払われる。つまり、自分で落として壊してもタダで修理してくれるわけだ。(JTB等大手ならこの保証の権利について言ってくれるだろうが、格安旅行会社だとほったらかしの場合もあるので注意!)
しかし、いくら保証されると言っても、初日からカメラを壊されてしまったのは痛い。十分に注意しましょう。その違法なお土産屋は警察に捕まったとか。この後、全ての観光地を巡った中では、この界隈が一番しつこいお土産屋が多かった。
写真撮影後はそのとなりにあるクフ王の子供であるカフラー王のピラミッドへ。ピラミッドを建設する際、前の物より大きな物を造ってはいけなかったらしい。しかし、カフラー王はクフ王のピラミッドよりも高台にピラミッドを作成し、遠くからみるとカフラー王のピラミッドの方が大きく見えるように建造した。ちなみに、本当はクフ王もその父のピラミッドがあるダムシュールにピラミッドを建設すべきところ、一番大きなピラミッドを造りたかったので、かなり離れたギザに建設したという。なお、ピラミッドの建設は強制労働だったという説が今まで強かったが、最近では冬の仕事が無い時期の公共事業だったのではないかと言われている。

カフラー王のピラミッドの周りにもお土産屋は数多い。さらにはラクダもたくさんいる。カメラの前を勝手に横切って写真を撮ってもいないのに50p(10円)とかバクシーシを要求する奴らが続出であるが、そんなやつらは無視無視。そして、玄室に入って行く。一端下った後、少し上ったところに玄室があるのだが、途中真っ暗闇があったり、屈みながら歩かなくてはいけなかったりするので非常に大変。玄室にたどり着くと、家のような形の大きな穴が開いており、ここにも三角形がつかわれているようだ。それにしても、とにかく暑い。通路は蒸し風呂のようで、外に出ると風も少しあったので、むしろ涼しいくらいだった。

次に三大ピラミッドの全体が見える展望台へ。確かにカフラー王のピラミッドが一番大きく見える。さらには化粧板がカフラー王のピラミッドの上部にだけ残っており、エジプトの富士山とも呼ばれているとか。(当然日本人だけが言っている)そして、一通りピラミッドを見て来た後は、いよいよスフィンクスである。カフラー王のピラミッドへ向かう参道のそばにあり、たまたまライオンのような岩を発見したから造ってみただけのようだ。鼻も髭も削られてしまい、あまり威厳のある顔に見えないのが残念。そして、スフィンクスが見ている物は、トリビアの泉で有名になった通りKFCだった。ここのKFCを利用したら、スフィンクス支店みたいな名前が付いているのだろうか。

スフィンクスを見ながら、まずは川岸神殿を見学する。ここでミイラを作成し、参道を通ってピラミッドへ運びいれたそうだ。これらの全てがきれいに残っているのがこの辺りではカフラー王のものだけで、これら全体をピラミッド・コンプレックス(ピラミッド複合体)と呼ぶ。この照り返しの強い川岸神殿で、ついに本日の最高気温は45.6度を記録した。カイロ市内は40度までいかないようだが、さすがに砂漠近辺は暑い。
最後に、希望者だけラクダに2US$(230円)で乗れるということで、半数くらいの人が乗っていた。ピラミッド周辺のぼったくりラクダ乗りではなく、ちゃんと定価なのはありがたいが、アスファルトの上ではいまいち盛り上がらないのではなかろうか。でも、どうしても乗って見たい人にはぼったくりなく、間違いはないのだが。
最後に、パピルス販売店へ行く。パピルスとは古代エジプトの紙であり、パピルスという植物の茎を薄く切って、縦横に張り合わせ、水分を無くした物。かなり丈夫な物で、丸めても大丈夫だし、折れることも無い。その作成方法を実演してもらった後、パピルスの販売コーナーへ。有名な画家の絵だから間違いが無いとガイドのホッサンさんは言っていたが、その後お土産屋等で見かけるパピルスはもっと安かった。別に偽物でも自分がパピルスだと思って価値を見いだせば、なんでも良いと思うのだが。ちなみに、偽物はベニヤ板のような物で作られているので、折ると簡単に折れてしまうそうだ。
これにて本日の観光は終了である。一日ピラミッド巡りで連れ回された感もあるが、まずは目的の一つが達成されて満足だ。朝と同じ売店で明日の水を買い求めてから、1時間ほどホテルで休憩。夕食に外に出かけるのがわかっていても、シャワーを浴びてしまう。Tシャツは、一日二枚ずつ持って来た方が良いかもしれない。あと、水は毎日大量に消費するので、大きめのボトルをたくさん購入し、500mlのボトルに移し替えながら飲むとよいだろう。ちなみに、ツアーバスでも水を売ってくれて、500ml二本で1US$(115円)だった。観光地価格でも水は1.5lが5£E(100円)くらいなので、売店を見つけたら水を購入するようにしておくと良いだろう。夕食はホテルから徒歩3分ほどのレストランだった。トマトベースの煮込み料理で、カレーのようにご飯にかけて食べるもので、まずまずおいしかった。
![]() |
【目次】 |