'11夏 小笠原諸島への旅 その5 - フィールドツアー

9月7日(水)
フィールドツアー
父島二見港14:00 おがさわら丸

早くも今日は東京に向けて帰る日だ。来たばかりなのにもう帰るのかという思いが強い。観光客で持っている島なのだから、一日ぐらいなら後ろにずらしても、次の土曜日の出航には問題ないと思うのだが、ずらしたらずらしたで文句を言う人が出るので、予定通りは致し方ないところだろうか。

今日はフィールドツアーで、植物見学のツアーだ。元々は一日コースの予定が入れられなくなったので、急遽出航日の半日コースへの変更をお願いしたのだが、満員だったので、違うBlueLaneのツアーに申し込んだ。

長崎展望台

8時半に宿まで迎えが来て、宿を巡りながら何名かピックアップすると、まずは町中の海岸沿いに生えている植物の説明を数カ所してから、長崎展望台へ向かう。この島ではタコノキがお土産で売られるくらいあちこちにあるが、黄色の実を見ると、沖縄でよく見かけるアダンとそっくりである。呼び方だけ違うのかと思いきや、実際はちょっと違う品種だそうだ。

長崎展望台は、景色の良い絶景ポイント。ここにきて、なんとカメラが不調。どうやら昨日塩水をかぶりすぎたらしい。昨日の星空まではちゃんと動いていたのに、今日になってシャッターが切れなくなってしまった。偏光フィルタを通した写真が撮れないのが残念だが、やむなくサブのコンパクトカメラで一日乗り切ることにする。この旅行用にカメラを新調しようと思っていたが、ちょうど良かったというか買い換える踏ん切りがついた。

サンクチュアリ マルハチ

次に向かうのがメインイベントで、サンクチュアリである。植物の生態系を守るために隔離していると言われるが、実際はアカガシラカラスバトをノネコから守るための領域になっている。猫が入らないようにしてあるゲートを入り、テレビで何度も紹介されている入場のための儀式を行う。靴の裏の泥を落とし、ころころで服に付いた種子を取るのと、靴裏の虫の卵などを殺すために酢をかける。気休めとは思うが、エコツーリズムとしては、地道な活動が必要だ。

サンクチュアリの中には小笠原固有の植物がたくさんあり、ガイドと一緒でないと入れない。そして、鳩が営巣するコアエリアには、ガイドでも入れないそうだ。植物だけではなく、エビやアメンボなども固有種。確かに、内地で見るアメンボに比べるとかなり小さい。これだけ自然を大事にしているところなのに、中には電柱の跡があったりして、このあたりにも人が住んでいて、元々は牧場だったそうだ。

扇浦海岸

遊歩道を歩いて一周一時間。途中、たびんちゅのみーなにも会った。たびんちゅでは最終日はウクレレ教室だったと思ったのだが、台風の影響で日程も変更して二人で平行してツアーをしているらしい。これにてフィールドツアーは終了。時間調整と休憩をかねて、扇浦海岸で休憩してから、町中に戻る。

船の出航まであと二時間。まずは昼食を食べなくては。ハートロックカフェのサメバーガーを食べようと思ったら、なんと売り切れとのこと。あとは至って普通のハンバーガーばかりだから、適当に町をぶらついて見つけた波食波食(ぱくぱく)食堂へ。島魚づけ丼や島魚ぶっかけ丼など、島らしい食事もあった。12時半に宿に戻り、シャワーを浴びて、13時に港まで送ってもらう。宿の人の話では、10分前でも大丈夫だよと言っていた。数分で港まで行けるので、何時に出発とか無くて、行きたい時間に送ってもらえる。

お見送り

出航の一時間前だというのに、通し番号は244番。ぎりぎりまで満喫組が多そうだ。帰りは特二等へのアップグレードを聞いてみたが、予想通り満席との話だった。荷物を置いて甲板に出ると、東京都の無形文化財にも指定されている踊りと、小笠原太鼓で航海安全祈願。そして、宿やツアーの人たち総出でお見送り。わらってこらえての人たちは予想通りお見送り側になっていた。島は全てが船で回っているから、船がいない間はやること無いので、このような盛大なお見送りシーンとなるのだろう。

お見送り

そして船が出航すると、恒例のツアー船が追いかけてきて、しばらく併走した後順番に飛び込み始める。これがいつまでもいつまでも続くので、最後の船は一時間も付いてきて、ついには兄島の方まで行ってしまっていた。人と人とのつながりが希薄な現代、「また来いよ〜」と言われれば、「また来ま〜す」と答えたくなる。たった一日のツアーでもみんな良く覚えてくれているので、まさにアド街ック天国で第一位になった小笠原LOVEだ。沖縄とはまた一味違い、短い期間でも濃厚な時間が楽しめた。

ちなみに、小笠原村は若い人の移住者が絶え間なく、戦争で断絶した歴史から老人が少ない。過疎と言うにはほど遠くて子供も多く、東京都の子供率ではダントツに違いない。そんなエネルギーを感じられる島だった。沖縄は逆におばあののんびりした雰囲気に溶け込む感じなので、だらだら過ごすには最適といえる。

出航後、一時間もするともうやることが無くなる。甲板から戻ってくると、ちょうど船内見学の申し込みの列ができていた。30分ごとに区切られて、9時20分集合の回だった。100人くらいしか見学できないので、予約が始まったらすぐに行かないと満員になってしまう。

すると、すぐ隣で特二等へのアップグレードの連絡が。64人分しかないのに、空き席申し込みは8番目で、申込時には係の人もたぶん無理でしょうねという話だったが、最後の席を確保できた。なんともラッキー。二等の1.5倍もする運賃だが、詰め込まれた二等とは雲泥の差。いわゆる二段式寝台車で快適だ。二等でももう少し余裕があれば良いのだが、寝返りも打てない狭さで、2万円以上も取るのはいかがなものか。紹介されている写真は空いているときの写真で、実際には3人のところに4人寝るようになっている。9月ともなれば、本当は空いている時期なのに、世界遺産登録で混雑が増しているようだ。それでも、帰りの便は若干空きがあるようで、一部の二等船室が解放されていた。

夕陽

そして、往路とは全く違って波がすこぶる穏やかである。波予報を見ても最後まで安定している。今回の台風12号は紀伊半島に膨大な被害をもたらしたが、海にも影響をもたらしていたようだ。17時46分が日没なので、雲の中に沈んでしまったが夕陽を見ると、18時から始まるレストランへ。すると、往路とは打って変わって長蛇の列ができていた。往路では揺れの影響で食べている人がほとんどいなかったが、今回は全く揺れがないので、皆普通に夕食を食べられるのだろう。

一時間待っても相変わらずの混雑だったので、仕方なしに列に並んで夕食とする。食事が終わった人が、どうせやることないので、いつまでもしゃべっているのが席が空かない原因。若者は倹約してカップラーメンなんかを食べているから、中高年の方々が席を独占している。最近の若い者はとか言えませんな。夕食を食べたらもうやることがないので、本を読むか寝るかである。22時には消灯だが、特二等には個別電灯があるのでいつまでも起きていられるが、すぐに寝てしまった。


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【目次】
出発準備編
出航
父島
南島
フィールドツアー
帰航