空港に一時間前にたどり着くことを考えると、6時半からの朝食前に出発しなくてはいけないので、コンビニで買っておいたおにぎりを食べて出発する。モノレールの駅に着くと、ちょうど雨が降り出した。週間天気予報では毎日雨続きで、早くも梅雨に入ってしまったかのような天気が続く。やはり、GWの沖縄は失敗したかと思ったが、沖縄の雨は東南アジアのようなスコールが多いので、晴れ間がのぞくことを祈る。
空港に着くと、早速、出発便遅延のお知らせが。遅れるのがわかっていれば朝食を食べてきたのだが、致し方ない。天候調査中の文字も追加され、場合によっては那覇空港に引き返すという。どうやら、南大東島に霧が発生していて、着陸できるかどうか怪しいそうだ。現地で聞いた話では、5月中旬ごろには霧が多いそうだが、今の時期には珍しいという。

仕方がないので待つしかないが、朝のラウンジはそもそも人が少ないのに、他に誰もいなくなった。8時少し前になったらゲート前に移動してみると、まだ出発調整中とのこと。朝の飛行機は皆出発していき、8時台の飛行機は、南大東島と久米島行きしかなく、次は9時半までないものだから、客が誰もいない。こんな大きな空港で客が誰もいない状況は、なかなかない。時間を持て余していたので、最後に買おうと思っていた御翔印を買っておく。

30分過ぎたところで、やっと出発の見込みが立ちましたとのアナウンスがあった。ただし、着陸できない時は引き返すという。まだ天候は怪しいのだろうか。結局、約一時間遅れで出発となった。琉球エアコミューター(RAC)の小型プロペラ機なので、バスで移動して搭乗する。貨客混在のDHC-8-400カーゴコンビで、後方1/3が荷物室になっているのは日本オリジナル仕様。この飛行機により、離島への荷物運送が劇的に改善された。


出発するとすぐに雲の中。一日天候は悪そうだが、それは沖縄本島だけのはず。南大東島は今は雨が降っていない。そろそろ到着時刻だな、と窓の外を見てみると、なんと島が見えていた。この辺りには南北大東島しかないはずだし、あれは明らかに南大東島の滑走路。滑走路の真上を飛んでいるとは、どういうことか。旋回中に北大東島が見えてくると、あぁ、こんなに滑走路がきれいに見えているのに、着陸できずに帰るのか、と思ったところでアナウンスがあった。いよいよあきらめて帰るのかと思ったら、北大東島方面から着陸するとのアナウンス。なんと、北大東島まで行かないと着陸態勢に入れないとは。

北大東島の上空で車輪を出し、無事南大東島に着陸した。話によると、空港にレーダーが設置されていないため、有視界飛行になり、着陸できるかどうか旋回して目視で確認していたようだ。こんなアナログな空港なかなか無いだろう。結局一時間遅れだったが、宿の迎えの人は待っていてくれた。

荷物は手作業で降ろした上に、沖永良部空港にさえあったローラーもなく、手作業でカウンターに並べるとのことで、なかなか荷物は出てこない。こんなのはいつもの風景と言わんばかりに、荷物が出てくるのは遅いから、トイレにでも行っていたらどうですか、と言われる。

目の前に売店があったので、真っ先に御翔印を購入するのと、たまに売っているという大東寿司があったのでお昼用に購入する。まったくもって、小笠原の島寿司と一緒で、タレに漬け込んだサワラの寿司である。琉球王朝時代には誰も住んでいない絶海の孤島で、明治時代に八丈島出身の人が開拓した島のため、文化が伊豆諸島である。泡盛ではなくラム酒だし、神輿を担ぐのも琉球にはない。
ひとまず宿まで送ってくれるのかと思ったら、レンタカーでついてきてとのこと。なんとまぁアバウトなこと。30年前の西表島を彷彿させる。基本、観光客は空港発着が多いから、車は空港に置いておく方が便利なのだろう。宿でチェックインと車の手続きをしたら、はれて出発となる。天気予報では一日雨だったが、今のところ雨が降る気配はない。

まずは宿が町中にあるので、歩いて1分のスーパーへ。スーパーミナミは、なんとまさにセブンイレブンを地で行く6時から22時のオープン。普通、小さな離島といったらスーパーは数件しかなく、品揃えも大したことないのが定番だが、スーパーはあっちにもこっちにもあるし、貨客飛行機のせいか品揃えは沖縄本島と代り映えない。なんとも離島に来た感じがしない。隣のケンちゃんストアーでは、一応名物の沖縄名物ゆし豆腐が売っていた。自分で鍋から掬って、発泡スチロールのボールに入れて持って帰る。
ひとまず、レンタカーで島一周を行う。南大東島は、沖縄本島、西表島、石垣島、宮古島、久米島に続く県内で6番目に大きな島。30km2の大きさがあり、周囲20kmもあるのでさすがに自転車では回り切れない。レンタカーかレンタバイクを借りるのが一般的だが、自転車で頑張っている人もいる。隆起環礁の島なので、平坦かというとそうでもなく、幕と呼ばれるカルデラのような高台に囲まれている島である。ちなみに、同じような言葉で隆起サンゴ礁があるが、形状が異なる。隆起環礁は火山のカルデラと同じ構造で、紐のような島になっていることも多い。隆起サンゴ礁はまさしくサンゴ礁が海面より上にあるだけの島である。

まずは、島全体が見えるという島の南にある日の丸展望台へ。サトウキビ畑が目の前に広がり、一見北海道のようである。展望台の上には座るところがなかったので、展望台下で昼食を食べることにしたのだが、オレンジの毛虫がうじゃうじゃいる。なんとなく危険を察知して触らないでいたが、後で聞いた話ではタイワンキドクガの毛虫のようで、大量発生しているそうだ。刺されなくても、0.1mmという目に見えない毒針が空中を漂っているとの話で、毛虫がたくさんいる空間にしばらくいたので、しばらくはかゆくて仕方がなかった。本格的に刺されると、病院送りになるらしいので要注意。

次に向かうのは、島の南東にあるシュガートレインのレールが残るポイントへ。正式には、大東糖業南大東事業所の砂糖運搬専用軌道と言い、南大東島にはサトウキビを運搬するためのナローゲージの鉄道があった。そのレールが今も島の4箇所に残っている。戦前は蒸気機関車で運搬していたが、戦争の爆撃で廃墟となり、戦後しばらくしてディーゼル機関車で復活したものの、1983年廃止になった。2013年には観光客誘致の観光鉄道として復活なんていう話もあったようだが、さすがに採算がとれるとは思えず、今に至る。

南北大東島は断崖絶壁の孤島で、海水浴なんてできないと思っていたが、さにあらず。砂浜はないが、それなりに海に面した場所もあり、そういったところに岩盤をくりぬいてプールがいくつかできている。そんな一つである、島の南西にある塩屋プールに向かう。砂浜がないので、見た感じ確かにプール。これだと、シャワーもないし、わざわざ泳いでみようかという気にもなれない。満潮時にはかなり危ないプールになるとのことだが、ビーチのない南北大東島の子供にとっては、これでも十分楽しめる海水浴かもしれない。
さて、これといって見どころのない南大東島で、唯一の観光地と言えば、星野洞という鍾乳洞である。空港でもらったパンフレットには、お昼休憩をはさんで、午後は14時からとのこと。実は古い情報で13時からになっていたが、何にしても12時を過ぎたところでは行っても意味がない。ということで、暇つぶしに空港に行ってみる。

朝9時と夕方15時しか飛行機が来ないので、空港職員は裏で何かしていたが、当然のように売店は閉まっていた。あるのは自動販売機とトイレだけ。結局何もすることはなかった。

次に向かうのは、島の北部にあるバリバリ岩。南大東島はフィリピン海プレートに載っており、年間数cmずつ西に動いているそうだ。その影響で岩が裂けてしまったということらしいが、プレート境界というわけではないのに、なぜ岩が裂けるのかよくわからない。暗いところはどこでもパワースポットとか言われてしまうが、本当にそうなのですかね。

見どころ少ないので、どこでもいいから回っていく状態で、次は展望台とあったので大池展望台へ。なぜかスロープだけで上がっていく展望台があり、しかもこれといって展望はない。なかなか不思議な物を作ったものだ。池のそばにはマングローブが広がっている。普通は海辺の汽水域に育つ植物のはずだが、石灰岩の地底は海とつながっているそうで、池なのに塩分があり、潮の満ち引きもあるらしい。南大東島は、なかなかに不思議な島である。

14時までには時間があるので、まだまだ暇つぶしが必要である。街中に戻って、ふるさと文化センターへ向かう。島のどこにいても10分くらいで街に戻れる。大したことがないのはわかってはいるものの、行くところがないので、暇つぶしが目的。予想通りに、これと言って面白い物はなかったが、頼むとシュガートレインのDVDを見せてくれた。
建物に入っている間に雨が降り出した。かなり大粒の雨で本格的。ふるさと文化センターのそばにある、朽ち果てたSLとディーゼル機関車のシュガートレインの写真だけ撮って車に戻る。いよいよ天気予報通りといったところか。
やっとのことで14時を過ぎたし、星野洞へ向かう。鍾乳洞なら雨が降っていても問題ないが、雨脚が強くなりそうだということで入り口には土嚢が積まれていた。その入り口は窓口からやや離れたところにあり、受付しないでも入れてしまうじゃないかという状態だが、まぁ観光客も少ないし、そんなことする人もいないしで、田舎ならではといったところだろう。

鍾乳洞はすごく大きいというわけではないが、それなりに長さもある。鍾乳石は見事で、観光客が少なくて壊れていないとということもあるのだろうが、石灰質の水が豊富ということでもある。
外に出ると雨は土砂降りになっていた。自転車で来ていた人は、動きが取れずに雨が止むのを待っているようだった。そもそもここまで自転車で来るとはご苦労なことだが、ちょっとやそっとの雨ではないので、なかなか雨の中走っていく気にもなれないだろう。こちらもいくら車とはいえ、ワイパーMAXでも視界がはっきりしないくらいの土砂降りのため、これ以上どこかに行くこともできない。
夕方の飛行機が到着する時間なので、空港に行ってみると、なんとこの土砂降りのために欠航になっていた。当然のごとく、売店も開いていない。仕方がないので、観光はここまでにして宿に戻る。とはいえ、見どころはすでに全部見てきてしまったので、これ以上行くところがないともいえる。
夕食は数少ないガイドブックに載っていた居酒屋ちょうちんへ。17時からということで、開始と同時に行ってみるとすでに一人旅の人が多く、30年前を未だに続けている人たちが多いことに気づく。北海道や八重山もそういう人種は残っていると思うが、それらの地域ではすっかり観光地化されて内地の人たちに文化ごと変えられてしまったので、肩身の狭い扱いになっている。しかし、ここ南大東島には昔ながらが残っている感じがした。なんせ、こんな千人くらいしか住人がいないのに、居酒屋は多いし、今時スナックも数多い。昭和の時代にタイムスリップしたかのような、不思議な空間でもあった。

南大東島の名物と言えば、クロシビカマスという深海魚で、網を切ってしまうというほどのあごの力があるそうで、ナワキリと呼ばれている。刺身かバター焼きで食べるのが定番とのことだが、バター焼きしかないとのことで、選択の余地なし。骨が多くて刺身で食べるには大変とのことだが、バター焼きは、まぁよくある白身魚のムニエルって感じで美味しい。ダルマという深海魚も名物らしいが、食べたらお尻から油が出てしまうらしく、厚生省は販売してはいけないと言っている。店によっては出してくれるところもあるらしい。
南大東島のお酒と言えば、南大東島の黒糖で作ったラム酒。赤ラベルは一般的な糖蜜を発酵させて作ったもの、緑ラベルはサトウキビ汁を発酵させたもので、緑がやや値段が高い。メニューには赤緑あるのに、今日は赤しかなった。メニューに書いてあるものがかなり無くて、なんともアバウトな感じが離島らしい。だが、やはり刺身は旨いし、一応沖縄ということで、ヒラヤーチもあったりで、なかなかに満足だった。
今日はナイトツアーに申し込んでおり、20時30分に出発する。ガイドは移住してきた東さん。ダイトウコノハズクというふくろうとダイトウオオコウモリを探しに行く。昼は大雨だったが、すっかり雨は上がっていて、星空も見えるくらい。しかし、降ってくるような星空とまではいかず、まぁ、見えないよりは良いねってくらいだった。

最初に光るキノコを探しに行く。小笠原父島でグリーンペペと呼ばれる光るキノコと同じようなものらしいが、こちらは柄がないので、エナシラッシタケという名のキノコ。明るいところで見ると上の写真のような白いキノコだが、暗闇で見ると緑色に光って見える。もしかすると、新種かもしれないと専門家が調査中という。ダイトウコノハズクも北大の研究員が入って全数調査しているそうだし、南大東島は観光客よりその筋の専門家の方が多いらしい。
いろいろな所を巡って行くが、フクロウはなかなか現れない。東さんがホーホーと無くと、縄張りに入られてたと思って、ホーホー鳴き返してくるので、いることはわかるが見ることはできなかった。大東神社ならコウモリがいるはずというので行ってみると、確かにガサガサ動く小さな塊を見ることができた。が、それよりなにより、蚊に刺されまくって大変、という思いしかなかった。
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